化学史
教授は、机の上から分子模型を取り出した。 黒い球。 白い球。 赤い球。 それらが棒でつながっている。 ミナは少し目を輝かせた。 「模型だとわかりやすいです」 「分子は紙の上では平面に描かれますが、実際には三次元の形を持っています」 教授は言った。 …
教授は次に、黒板に書いた。 官能基 ミナは言った。 「分子の性格を決めるパーツでしたね」 「はい」 教授はうなずいた。 「炭素の骨組みに、どんな官能基がつくかによって、分子の性質は大きく変わります」 レンが例を挙げた。 -OH -COOH -NH₂ 「たとえば、…
教授は黒板に、炭素を並べて書いた。 C―C―C―C C | C―C―C Cの輪 「炭素は、炭素どうしでつながることができます」 ミナは言った。 「前の章でも出てきました。鎖や輪を作れる」 「はい」 教授はうなずいた。 「この性質のために、有機化合物には非常に多くの…
教授は黒板に「構造式」と書いた。 構造式 原子がどうつながっているかを表す式。 ミナは言った。 「構造式は、分子の組み立て図」 「はい」 教授はうなずいた。 「分子式が材料リストなら、構造式は組み立て図です」 黒板に書く。 分子式 C₂H₆O 原子の種類…
教授は黒板に、新しい言葉を書いた。 異性体 ミナは言った。 「これが異性体ですね」 「はい」 教授はうなずいた。 「異性体とは、同じ分子式を持ちながら、原子のつながり方や空間的な並び方が違うため、異なる性質を持つ物質のことです」 レンが少し補足し…
教授は黒板に書いた。 C₂H₆O ミナはそれを見て言った。 「炭素が2個、水素が6個、酸素が1個」 「はい」 教授はうなずいた。 「では、この分子式を持つ物質は一つだけでしょうか」 ミナは少し自信なさそうに言った。 「一つ……じゃないんですよね」 「はい」 …
黒板には、前の章の最後に書かれた問いが残っていた。 同じ分子式なのに、なぜ違う物質になるのか。 ミナは、その問いを見ながら言った。 「同じ分子式なら、同じ物質じゃないんですか」 教授は静かに首を振った。 「必ずしもそうではありません」 レンが言…
教授は黒板に、矢印を書いた。 生き物から取り出す ↓ 実験室で作る ↓ 目的に合わせて設計する 「有機化学は、自然にある物質を調べるだけではありません」 教授は言った。 「やがて、目的の分子を設計し、作る学問へ広がっていきます」 ミナは言った。 「薬…
教授は黒板に戻り、最初の問いを指した。 生命の物質は特別なのか。 「この問いへの現代的な答えは、少し丁寧に言う必要があります」 ミナは聞いた。 「どういうことですか」 「生命は特別な現象です」 教授は言った。 「しかし、生命を作る物質そのものは、…
レンが言った。 「有機化学では、官能基も重要ですね」 ミナはすぐに言った。 「出ました。難しそうな言葉」 教授は笑って、黒板に書いた。 官能基 分子の中で、性質や反応性を決める部分。 「たとえば、-OHという部分を持つ物質は、水になじみやすくなった…
ミナは聞いた。 「でも、どうして有機化学は炭素化合物なんですか」 「炭素には大きな特徴があります」 教授は黒板に書いた。 炭素は、炭素どうしでつながることができる。 レンが言った。 「鎖や環を作れるんですね」 「はい」 教授はうなずいた。 「炭素原…
教授は黒板に「有機化学」と書いた。 「尿素合成のような出来事をきっかけに、有機物は実験室でも作れる対象として見られるようになっていきます」 ミナは言った。 「生き物だけの物質じゃなくなる」 「はい」 教授はうなずいた。 「やがて有機化学は、炭素…
ミナは言った。 「じゃあ、その瞬間に生命力説は終わったんですね」 教授は首を横に振った。 「そこは注意が必要です」 ミナは少し驚いた。 「違うんですか」 「ヴェーラーの尿素合成は非常に重要でした。しかし、それだけで生命力説がその日に完全に消えた…
教授は黒板に名前を書いた。 フリードリヒ・ヴェーラー ミナは聞いた。 「この人が、生命力説を壊した人ですか」 教授は少し慎重に言った。 「よく、そのように紹介されます。ただし、少し丁寧に見る必要があります」 レンが言った。 「ヴェーラーの尿素合成…
教授は黒板の中央に、もう一度書いた。 生命力説 「生命力説では、生き物だけが持つ特別な力によって、有機物が作られると考えられました」 ミナは言った。 「実験室では作れない、ということですか」 「基本的には、そういう考え方です」 教授は答えた。 「…
教授は黒板に書いた。 なぜ、生き物の物質は特別に見えたのか。 ミナはすぐに言った。 「複雑だからですか」 「はい。それは大きな理由です」 教授はうなずいた。 「砂糖、油、タンパク質、デンプンのような物質は、鉱物や単純な塩に比べて複雑に見えます。…
教授は黒板に二つの言葉を書いた。 有機物 無機物 ミナは言った。 「有機化学の有機ですね」 「はい」 教授は言った。 「現在では、有機化学は主に炭素化合物を扱う化学です。ただし、歴史的には、有機物という言葉は、生物に由来する物質と深く関係していま…
黒板には、前の章の最後に書かれた問いが残っていた。 生命の物質は特別なのか。 ミナは、その一文を見て少し首をかしげた。 「生命の物質って、何ですか」 教授は黒板にいくつかの言葉を書いた。 砂糖 油 タンパク質 アルコール 尿素 デンプン 脂肪 DNA 「…
教授は黒板に、新しい問いを書いた。 生命の物質は特別なのか。 ミナは言った。 「今度は生命ですか」 「はい」 教授はうなずいた。 「原子や分子の考えが整ってくると、次に大きな問いが現れます。生き物の体を作る物質は、普通の物質と同じように考えられ…
教授は、黒板にこう書いた。 H₂O CO₂ O₂ NaCl 「これらは、ただの記号ではありません」 ミナは言った。 「物質の中身を表す言葉」 「はい」 教授はうなずいた。 「化学式は、見えない粒の世界を表す言葉です」 レンが言った。 「文字だけど、そこには原子の…
教授は黒板に、原子と分子を並べ直した。 原子 元素の基本単位 分子 原子が結びついた粒 「この区別によって、化学式や反応式が整理されました」 ミナは言った。 「HとH₂を区別できる。OとO₂を区別できる。H₂Oも説明できる」 「はい」 教授はうなずいた。 「…
教授は黒板に反応式を書いた。 2H₂ + O₂ → 2H₂O ミナは言った。 「これは見たことあります」 「では、意味を考えましょう」 教授は言った。 「水素分子2個と、酸素分子1個が反応すると、水分子2個ができます」 黒板に書く。 2個のH₂ = H原子4個 1個のO₂ =…
教授は黒板に名前を書いた。 アボガドロ 「アボガドロは、気体について重要な考えを出しました」 ミナはペンを構えた。 教授はゆっくり書いた。 同じ温度・同じ圧力では、 同じ体積の気体には、 同じ数の分子が含まれる。 ミナは声に出して読んだ。 「同じ体…
教授は黒板に戻り、こう書いた。 気体の体積比 ミナは言った。 「体積比?」 「はい」 教授は言った。 「気体どうしが反応するとき、体積の比が簡単な整数比になることが知られていました」 レンが言った。 「水素2体積と酸素1体積が反応して、水蒸気2体積が…
レンが言った。 「先生、でも食塩はNaClですよね。あれは分子ですか」 教授はミナの方を見た。 「どう思いますか」 ミナは少し考えた。 「NaClだから、ナトリウム1個と塩素1個の分子……ですか?」 教授は首を少し横に振った。 「そこは注意が必要です」 ミナ…
教授は黒板に新しい二語を書いた。 単体 化合物 ミナは言った。 「これも混乱しやすいです」 「では、分けて考えましょう」 教授は書いた。 単体 1種類の元素だけからできた物質。 化合物 2種類以上の元素からできた物質。 レンが言った。 「H₂やO₂は単体。H…
教授は次に書いた。 O O₂ 「酸素も同じです」 ミナは言った。 「Oは酸素原子、O₂は酸素分子」 「はい」 教授はうなずいた。 「空気中にある酸素は、主にO₂という分子として存在しています」 レンが言った。 「そして、オゾンはO₃ですね」 ミナは驚いた。 「…
教授は黒板に、二つの記号を書いた。 H H₂ ミナは言った。 「ここが混乱します」 「では整理しましょう」 教授は言った。 H 水素原子 H₂ 水素分子 「水素原子Hが2個結びつくと、水素分子H₂になります」 レンが言った。 「水素ガスとして存在するときは、ふつ…
教授は次に書いた。 分子 = 原子が結びついてできた粒 ミナは言った。 「原子が集まると分子になる?」 「多くの場合はそうです」 教授は答えた。 「たとえば、水分子は水素原子2個と酸素原子1個が結びついたものです」 黒板に書く。 H₂O = H原子2個 + O…
教授はまず、黒板にこう書いた。 原子 = 元素の基本単位 ミナは言った。 「元素の基本単位……」 「はい」 教授は言った。 「水素という元素を考えるとき、その基本になる粒が水素原子です。酸素という元素なら酸素原子、炭素という元素なら炭素原子です」 黒…