Dr. K

気の赴くままに書きます

9-5. 官能基が性格を変える

教授は次に、黒板に書いた。

 

官能基

 

ミナは言った。

 

「分子の性格を決めるパーツでしたね」

 

「はい」

 

教授はうなずいた。

 

「炭素の骨組みに、どんな官能基がつくかによって、分子の性質は大きく変わります」

 

レンが例を挙げた。

 

-OH

-COOH

-NH₂

 

「たとえば、-OHを持つとアルコールとしての性質を示します。-COOHを持つとカルボン酸としての性質を示します」

 

ミナは少し身構えた。

 

「全部覚えないとだめですか」

 

「今は覚えなくて大丈夫です」

 

教授は言った。

 

「ここでは、分子の性質は炭素骨格と官能基の組み合わせで変わる、という考えを持てば十分です」

 

黒板に書く。

 

分子の性質

= 炭素骨格 + 官能基 + 形

 

ミナはノートに書いた。

 

官能基は、分子の働きを変えるパーツ。

9-4. 炭素は骨組みを作る

教授は黒板に、炭素を並べて書いた。

 

C―C―C―C

 

C

|

C―C―C

 

Cの輪

 

「炭素は、炭素どうしでつながることができます」

 

ミナは言った。

 

「前の章でも出てきました。鎖や輪を作れる」

 

「はい」

 

教授はうなずいた。

 

「この性質のために、有機化合物には非常に多くの構造が生まれます」

 

レンが言った。

 

「直鎖、分岐、環状構造ですね」

 

ミナは言った。

 

「同じ数の炭素でも、一直線につながるか、枝分かれするか、輪になるかで変わる」

 

「その通りです」

 

教授は黒板に書いた。

 

炭素骨格

分子の基本的な形を作る炭素のつながり。

 

ミナはノートに書いた。

 

炭素は、分子の骨組みを作る。

9-3. 構造式は分子の組み立て図

教授は黒板に「構造式」と書いた。

 

構造式

原子がどうつながっているかを表す式。

 

ミナは言った。

 

「構造式は、分子の組み立て図」

 

「はい」

 

教授はうなずいた。

 

「分子式が材料リストなら、構造式は組み立て図です」

 

黒板に書く。

 

分子式

C₂H₆O

原子の種類と数を表す。

 

構造式

CH₃CH₂OH

CH₃OCH₃

原子のつながり方を表す。

 

レンが言った。

 

「有機化学では、この構造式がとても重要になります」

 

「その通りです」

 

教授は言った。

 

「炭素化合物は、同じ分子式でも多くの異性体を持つことがあります。だから、分子を理解するには、構造を見る必要があります」

 

ミナはノートに書いた。

 

有機化学では、分子式より構造式が大事になることが多い。

9-2. 異性体

教授は黒板に、新しい言葉を書いた。

 

異性体

 

ミナは言った。

 

「これが異性体ですね」

 

「はい」

 

教授はうなずいた。

 

「異性体とは、同じ分子式を持ちながら、原子のつながり方や空間的な並び方が違うため、異なる性質を持つ物質のことです」

 

レンが少し補足した。

 

「今のエタノールとジメチルエーテルは、つながり方が違う構造異性体ですね」

 

ミナはすぐに言った。

 

「構造異性体、もう少しやさしく言うと?」

 

教授は黒板に書いた。

 

構造異性体

同じ材料で、つなぎ方が違う分子。

 

ミナはうなずいた。

 

「それならわかります」

 

教授は続けた。

 

「エタノールは液体で、お酒に含まれるアルコールです。一方、ジメチルエーテルは常温では気体として扱われる物質です」

 

ミナは驚いた。

 

「同じ分子式なのに、そんなに違うんですか」

 

「違います」

 

教授は答えた。

 

「だから、分子式だけでは足りないのです」

 

ミナはノートに書いた。

 

分子の性質は、原子の数だけでなく、つながり方で変わる。

9-1. 分子式だけでは足りない

教授は黒板に書いた。

 

C₂H₆O

 

ミナはそれを見て言った。

 

「炭素が2個、水素が6個、酸素が1個」

 

「はい」

 

教授はうなずいた。

 

「では、この分子式を持つ物質は一つだけでしょうか」

 

ミナは少し自信なさそうに言った。

 

「一つ……じゃないんですよね」

 

「はい」

 

教授は黒板に二つの構造を書いた。

 

CH₃CH₂OH

 

CH₃OCH₃

 

レンが言った。

 

「上はエタノール、下はジメチルエーテルです」

 

ミナは目を細めて見た。

 

「どっちもC₂H₆Oなんですか」

 

「そうです」

 

教授は言った。

 

「原子の種類と数は同じです。しかし、つながり方が違います」

 

黒板に書く。

 

エタノール

炭素―炭素―酸素 の並び

 

ジメチルエーテル

炭素―酸素―炭素 の並び

 

ミナは言った。

 

「材料は同じでも、組み立て方が違う」

 

「その通りです」

第9章 分子には形がある

黒板には、前の章の最後に書かれた問いが残っていた。

 

同じ分子式なのに、なぜ違う物質になるのか。

 

ミナは、その問いを見ながら言った。

 

「同じ分子式なら、同じ物質じゃないんですか」

 

教授は静かに首を振った。

 

「必ずしもそうではありません」

 

レンが言った。

 

「ここで大切になるのが、分子の構造です」

 

教授は黒板に、二つの言葉を書いた。

 

分子式

構造式

 

ミナは言った。

 

「分子式は、H₂OとかCO₂みたいなものですよね」

 

「はい」

 

教授はうなずいた。

 

「分子式は、どんな原子が何個あるかを表します。しかし、それだけでは、原子がどうつながっているかまではわかりません」

 

ミナは少し考えて言った。

 

「材料リストみたいなもの?」

 

「よい比喩です」

 

教授は微笑んだ。

 

「分子式は材料リスト。構造式は組み立て図です」

8-11. 次の問いへ

教授は黒板に、新しい問いを書いた。

 

同じ分子式なのに、なぜ違う物質になるのか。

 

ミナは言った。

 

「分子式?」

 

「はい」

 

教授は答えた。

 

「有機化学が進むと、同じ種類と数の原子を持つのに、性質が違う物質があることがわかってきます」

 

レンが言った。

 

「異性体ですね」

 

ミナは言った。

 

「つまり、原子の数だけじゃなくて、つながり方が大事になる」

 

教授はうなずいた。

 

「その通りです」

 

「次章では、分子には形がある、という話に進みましょう」

 

ミナはノートの最後に、まとめを書いた。

 

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第8章のまとめ

 

生命の物質は、かつて生命だけが持つ特別な力で作られると考えられた。

しかし、尿素合成などをきっかけに、有機物も実験室で作れる対象となり、有機化学は炭素化合物を理解し、設計し、作る学問へ発展した。