Dr. K

気の赴くままに書きます

【共通テスト】2021年度-化学基礎

2021年度の化学基礎を解いてみました(記事の画像は全て

東進解答速報のページより転載(https://www.toshin.com/kyotsutest/data/384/kagaku.pdf)

)。昔と変わらず、原子量は記載されているため、暗記の必要はなし。

 

30分で17問なので、単純計算で一問約2分ですね。パッと答えられるものに時間をかけず、後ろの方の問題文が長い問題にどれだけ早めに辿り着けるかが大事だと思います。また、他の理科科目も同時に受けるのであれば、他の科目の方が計算や問題文が長いと思うので、化学は早く終わらせたほうがいいと思います。

基本的な問題が多いので、化学の勉強をしていればなんとなく雰囲気でも解けてしまいそうです。化学に興味がない文系の学生たちには暗記しろというには確かに酷な話かもしれません。。問題で問われていることをイメージすること、作成者の意図を掴むことができれば仲間外れを見つけるゲーム感覚になると思うので、便覧やyoutubeなどで視覚化しておくことは重要であると思う。(実際にやったりすると実感が湧くはず)

 

一回分をネットで書くだけでこんなに大変な作業だとは思いませんでした。。。

実際にやられている方々の苦労が身にしみてわかりました。

掲載方法を検討したいと思います。

 

 

 

 

 第一問

問1: 物質の分類

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1:  

研究室ではほとんど意識してなかった事項、久しぶりにこのような区分をみて懐かしく感じました。有機化学を研究していると単体のものはほとんどない印象です。

 

純物質(pure substabce): 単一の化学式で表すことのできる元素組成をもつ物質。

  • 単体(simple substance): 純物質で一元素からなるもの。単体以外の純物質は化合物。この問題ではO3であるオゾン。
  • 化合物(compound): 2種類以上の元素からできている純物質の総称。ここでは炭素Cと水素HからできるメタンCH4。

混合物(mixture) : 2種類以上の純物質が混ざり合ったもの。ここでは、窒素N2や酸素O2の混合物。

問2: 物質量

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 2:

化学反応と物質量(amount of substance)の計算。大学に入っても有機系の研究室に入っても必ず行う作業。

① 温度0度、圧力1気圧のもとでの状態、つまり標準状態(standard state)で22.4 Lといえば、酸素O2の物質量は1.0 molである。酸素原子Oを問われているので、2.0 mol

② 水H2Oの分子量は18なので、水18 gは1 mol。 水H2Oなので1.0 mol

過酸化水素がH2O2であることを知ってるかどうか。知らなくても過酸化という名前から想像できる。酸素原子Oの物質量は2.0 mol

④ C+O2→CO2という化学反応をかけるか。黒鉛12 gは1.0 molなので酸素原子Oの物質量は2.0 mol

問3: 物質の分類

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3: ③ 4:  5:  6:  7: 

グラフも見ると中性子もジグザグでなにかしら規則がありそう。

 

3:原子番号(atomic number)と共に綺麗に増加していることから陽子(proton)、は周期的に変化していることから、価電子(valence electron)。中性子

 

4–7: 

質量数(mass number) = 陽子+中性子を知っているかどうか。

図1中で一番大きいのは原子番号18のアルゴン(argon)。22+18で40

K殻には2個、L殻には8個、M殻には8個の電子が配置される。M殻に電子がないということは最大で電子が10個収納できる原子番号10のネオンNeとなる。

 

アルゴンの中性子だけ周期性がないように思える。実際、アルゴンには40と38と36があり、大気中には40が99%以上であるらしい。これは原子番号が一つ大きなカリウムから生成されてアルゴン40が増加しているためらしい。カリウムは今度、しっかり調べてみようかしら。

 

問4: 結晶

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8:

研究室では結晶を作るために、再結晶や蒸気拡散を行っていた。いい結晶を得られたらXRDで結晶構造解析をして、分子がどのような規則性で配列しているかを調べていた。

 

自由電子をもち、電気をよく通すということから金属結晶(metal crystal)。ナフタレンの結晶のようなから分子結晶(molecular crystal): 電荷を持たない独立した分子がファンデルワールス力(van der Waals force)により凝集してできる結晶。共有結合の結晶(covslent crystal): 三次元の網目状に広がった共有結合によりすべての原始が結び付けられ、全体として一つの巨大分子となっている結晶。

 

分子結晶と共有結合結晶は直感としてわかりにくいが、黒鉛が例外なだけで代表的な酸化ケイ素などを覚えておけば良さそう。

黒鉛が電気を通すのは、国立大学の個別試験などではよく問われていると思う。sp2混成軌道上の電子が自由電子となることで可能となっている。これは、白川先生のノーベル化学賞の受賞対象となった導電性ポリアセチレンと同じ原理である。 

問5: 金属の性質

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9:

知識的な問題。知ってるか知らないかだと思う。「高温の水蒸気」ってなんだろうと思ってしまった・・・

イオン化傾向(ionization tendency): 金属が液体、とくに水、と接するとき、電子を放出してイオンになろうとする傾向。ここではMg>Al>Pt。

 Ptは白金となので、金Auとほぼ同じで王水にしか溶けない。

 

問6: 酸化剤

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10:

自分が高校時代にも混乱してたこと。酸化剤は自らが犠牲になって還元するから相手を酸化できると聞いて納得したのを覚えている。逆の還元剤も然り。酸化数を考慮するなど久しぶりの感じ。

 

①は酸化数の考え方よりも直感的に酸素が増えているから酸化されているので、還元剤だろうとわかる。

酸化剤(oxidizing agent): 目的物質を酸化する物質で、この反応によって酸化剤自らは還元体となる。

 

 

問7: 溶液の濃度

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11:

 

NA(mol)=[d(g/cm3)*100(mL)* x/100] / M(g/mol)

単位に注目して立式する。xが%表示なので1/100にすることに注意する。

 

こういった立式ができるとエクセルでの操作が楽になるので、学生実験などで結果の処理に役立つ。こういう問題は単位に注目すれば簡単に解ける。

 

 

問8: 燃料電池

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12:

係数に注目する問題。問題から2 molの電子が流れている。正極の4e-が2 molに対応するので、係数が電子の1/2である水は1 mol生成する。よって18 gの水が生成する。負極では2e-が2 molに対応するので、消費された水素の物質量は1/2の1 molとなり2.0 g。

 

効率のいい燃料電池の開発はこれからの課題であることは言うまでもない。

 

 第二問

問1: 陽イオン交換樹脂

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13:  14:

a: 正塩(normal salt): 酸(acid)の水素イオン(hydrogen ion)が完全に他の陽イオン(cation)で置換されるか、あるいは、塩基(base)のOH-が完全に他の酸基で置換された塩。 ここでは水素イオンが一つ残り酸性塩となっている③が答えとなる。

b: 問題文の(陽イオンの価数)*(陽イオンの物質量)=(水素イオンの物質量)から陽イオンの価数に注目する。MgCl2のみMgが2価の陽イオンなのでウが正解。

 

aは、問題を読まなくても4つのうちから仲間外れを探せばNaHSO4であることがわかると思う。bも仲間外れがわかればいいと思う。

 

問2: 中和、実験器具

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15:

① H2SO4(強酸2価) + KOH(強塩基1価) 

② HCl(強酸1価) + KOH(強塩基1価) 

③ HCl(強酸1価) + NH3(弱塩基1価) 

④ HCl(強酸1価) + Ba(OH)2(強塩基2価)

CaCl2は正塩であるので、その水溶液は中性となる。混合する酸及び塩基を同じ量で混合するので、中性になるのは価数が等しく、強酸・強塩基の組み合わせのものになる。

 

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16:

器具の名前とその用途がわかっていなければならない。ビーカー(beaker)を用いている①もメスシリンダー(graduated cylinder)を用いている④も水溶液を調整することができるが、正確に測るためには標線の部分が細くなっているメスフラスコ(volumetric flask)を用いるのが適当。

 

500 mLと問題文に書いてあり実験となると想像しにくいかもしれないが、500 mLのペットボトルの量を正確に測るとなると相当太いメスシリンダーやビーカーが必要になる。そうすると標線での計量は難しくなる。そこで、標線の部分の口が細くなっているメスフラスコで測るのが適切とわかる。メスフラスコやメスシリンダーはドイツ語由来なのでカッコよく発音しても英語圏では伝わらないかも。日本はドイツから化学の技術を輸入しているのでカタカナが全て英語とは限らない。

 

 

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17:

中和(neutralization)に用いた0.100 mol/L水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)は40 mLなので、供給したOH-は0.100*0.04 = 0.004 mol。中和に用いた塩酸は500 mLから10.0 mLとっているので、元のH+の物質量は50倍。0.004*50 = 0.2 mol。問題文からH+はCa2+と交換することで出てくるので、価数が2のCa2+の物質量は価数が1のH+の半分。なので元々のCaCl2の物質量は0.1 mol。CaCl2=111なので水の量は11.5-111*0.1 = 0.4 g。

 

センターの頃からそうだが無駄な計算はさせないと思うと、式量が111、試料A11.5 gとかからなんとなく0.4 gかなと推測を立てて進められる。時間がなければとりあえず①。

 

第二問は何をしているかイメージがつかないと難しいと思う。実験操作などを日頃から確認することが大事。

 

英単語や言葉はエッセンシャル化学辞典を参考にしました。